ウチのコゾウが縁あって浜松の自動車部品メーカーに就職することになり、浜松の実家から通うことになった。
やっとこさ手が離れて学費の心配もいらなくなり、一安心と言いたいところだが、やったぜ!小遣い使いたい放題だ!どころではなく、やれエアコンが欲しいだの光回線が必要だのとあれこれ細々とした出費がある。
そんなもん、自分で出せばいいもんだろうが、俺も親の脛を齧ってきた身なのでブツブツ言いつつも結構甘いのである。
そのコゾウが初任給で「父ちゃんと母ちゃんに」と日本酒を買ってきた。
「なんだよ初任給全額くれるとか言ってなかった?」などとは決して口にすることなく「ありがとうねえ、ありがとねえ」とニコニコいただいちゃうのである。
GWには帰省したのだが、コゾウの引っ越し荷物の片づけやらで、相変わらずゆっくりすることなどできなかった。
だが、その忙しい時間の合間に、皮ツナギとバイク屋めぐりをしたいとコゾウが言う。
バイクも大型免許が取りたいし、皮ツナギもいずれは、と。
まあどうしてバイクなんぞ好きになっちゃったのかねえ。バイク面白いか?そうか、面白いか。
なじみのジュベットに寄ったあと、バイク屋をハシゴした。
大型免許が取れたらGSX-R750が良いんだと。
「なんでよ、1000の方がタマ数多いんじゃないの」と言うと
「1000はねえ、もう最高なわけじゃん。大型免許取って最初のバイクがそんな最高なのでいいのか、っていうね」
まあな。ほんでも俺が大型免許取った時には、一緒に取ったヤツ、教習所に通ってる間にもう買っちゃって玄関先に飾ってるっての何人かいたぞ。CB750Fとか、カタナとかな。
そんなふうに「このバイクに乗りたいから免許取る!」っつーのもアリなんだがな。
「あとさき考えずに買っちゃうっていうのもアリなんだぜ。バイクっていうのは好きになっちゃったらそれっきりだからな。好きになったバイクに悪いバイクなんかイッコも無いからな。俺だってあのバイクを買おうってバイク屋に行ったら、一目惚れで別のバイク買っちゃったりしたからな」
ニヤニヤしながらそんなことを吹き込んでバイク屋をめぐる。
最初の川島モータースでGSX-Rのことを聞くと、やはりタマは無いとのこと。中古車はピンキリだし動きも早く、たまに出てもあっという間に関西方面に消えていくという。
新型のGSX-R1000も開発は遅れているらしく、今年の冬には間に合いそうもないし、値段も230万くらいにはなるだろうという。
うーむ。やっぱり750の新車を買うのが一番確実なんだろうなあ。
新車で乗り出し価格がだいたい130万くらいだと。
稼ぎが全部小遣いの独身の若い衆が2,3年のローン組むにはそれほど無理がないだろう。
川島モータースを後にしてじゃあ次は家の近くのレッドバロンに寄ってみることにした。
と、店に入るなり【新車のGSX-R750】が置いてあるじゃあーりませんか!
うーむ。相変わらずカッコイイ。
ZX10RもR1もいいよ?いいけどが。
やっぱり並べて比べればGSXRだよ。ジクサーですよ。
ジクサーいいね。いいよ、ジクサー。
(あっ、CBRさんはちょっとご遠慮いただいてイイスカ)
ほほー、値札を見ると100万チョイとな。1年落ちなんで値引きしてるのだと。
「ウウーン、色、黒でしょ、青白がいいんだよなー」とかコゾウはモジモジしている。
店員に聞くと他店で青白も在庫があるという。
っほっほー、いいじゃんいいじゃん、ちょっと跨らせてもらえよ、店員さん、いいよね?
なーに、こかしたらお前が買えばいいんだからwwww
「おおっ!軽い!!! 足つきがいい!!!うわっ軽い!コレいい!コレいいわー!」
跨った途端にコゾウは有頂天である。
「いいとは思ってたけど、本当にこれはいいわ。すごい。」
そりゃいいだろうな、俺が乗ってた1100よりも40kgも軽くて20馬力もパワーがある。750のくせに!
跨ってそんなにいいなら走りだしたらたいへんですよ、もうそりゃたいへんですからね。
横でニコニコしてたら店員が「お父さんも跨ってみては」と勧めだす。
いや、俺が選ぶわけでも乗るわけでもないからね。
それに俺にはホラ、例のホラ、ブーコちゃんがいるでしょ。300psの。
コゾウが浮かれてるからって一緒になって跨ったりしたら大人げないでしょ。
俺が買うわけでもないのに。いやいいですって。
「おおっ!軽い!!! 足つきがいい!!!うわっ軽い!コレいい!コレいいわー!」
跨った途端に俺は有頂天である。
「いいとは思ってたけど、本当にこれはいいわ。すごい。」
あっ気付かぬうちに跨ってた。
これはいかん。
跨ってそんなにいいなら走りだしたらたいへんですよ、もうそりゃたいへんですからね。
帰る道すがら、コゾウと一緒にニコニコニコニコしていた。
こうしてコゾウは恋におちたのだった。