ターボバイクの肝。

なぜターボバイクは壊れるのか?

そりゃま、浜名湖に落としたりしたらそら壊れますが。
ほんでも、このBlogを始めて10年? もっとか!
その間に何人かの人から、俺と同じようにハヤブサターボを組んだ---でも壊れちゃったよ、って話とか、ターボ組んだけど、それほどパワー出ない、って話とかいただくわけですよ。

俺もそういう話を聞きながら、マトモに走り始めたら俺のも寿命短いのかな、なんて戦々恐々としてましてね。
アメちゃんなんかは、「全然ヘッチャラ。毎日300kmくらいは普通に出して通勤してるけど2年間問題ない」とか「400psまではエンジン強化しないでもイケるよ」とか気軽に言うんですけどもね。
本気で言ってるのかもしれないし、経験に裏打ちされてるのかもしれないし、
ことによったら

OMG!昨日までは大丈夫だったんだ!」

ってことかもしれん。
今壊れていないのは俺のが「マトモになってなくて修理中」だからではないか、とかね。

でもでもでもですよ、MC-Xpressのキットを組んだバイクは、それなりに走ってるみたいだけども、ブローしたっていう話は聞こえてこない!自分のも調子が出てないって言いながらも、ノッキングの兆候もなかったし!
もしかするとこのキットは当たりかもしれん!

っていやいやいやいや俺の希望的観測wwwデータが少な過ぎるww
落ちつつある旅客機の乗員が「もしかしたら雪山に落ちて助かるかも」くらいのwww

こんなふうに俺の心はあこがれの吹奏楽部の部活の先輩が昼休みに同じクラスの女の子と親しげに話していたのを盗み見てしまった16歳の女子高生(ショートカット生足派)なみに揺れ動くんだよ!!

それでもせめてもの希望のよすがに、ほんじゃあ、MC-Xpressのキットと単車屋とかの他のキットと何が違うかって考えるわけです。
燃料系が強化されてるからじゃないのかなぁとかね。追加インジェクターもついてるし、リッター5kmっていう凶悪な燃費と引き換えに十分に濃い燃料噴いてるからノックも無いんじゃないのかなとか。
ようはガソリンを濃く噴いてるから壊れないんだ、って漠然と考えてたんですよ。

それが、今回沼津のFactory23若林さんのトコでいじっていろいろ問題が判明し、それが解決していく過程でだんだんわかってきましたよ。
いや、わかったっていうより、納得がいった、腹に落ちたっていうのかな。
それまで得ていた知識が、結びついたっていう感じ。

何が危ないか。何をやったからパワーが出たのか。今の状態の何がいけないのか。
どこにリスクがあってそれをどうつぶして、何を諦めるべきか。
見えてきた。ような気がする。

◆なぜパワーが出たのか

まず俺のキットには前述の通り、追加インジェクターがついてます。追加インジェクターはハヤブサのもの純正品らしいので、単純計算で、ノーマル出力の倍。つまり175×2=350ps出せる。。。
一本あたりの容量は276cc@43psi。
「インジェクター 馬力 計算」でググるといくつかインジェクター容量で馬力計算するサイトがあるのでそこで計算してみましょう。
例:http://www.tosotoso.com/two3/PowerJS.html
インジェクター容量(552cc/気筒)だけ見ると380psくらいまでは出せる。かもしれないw

エンジンの馬力というのはどれだけ燃料と空気を突っ込んで、燃焼させるか、に尽きます。
どんだけデカいタービンつけて、どんだけ過給圧上げても、燃やすガソリンを噴けなくちゃ馬力は上がりません。
パワー出すにはインジェクターの容量を上げないとどうにもならないです。
ホンダS2000用のインジェクターを使って容量上げる手法があるみたいで、アメリカのフォーラムでは割とポピュラーな話題になってますね。容量が390cc@43psi なので、これを追加インジェクターに使えば… 450psくらいイケる!!!

※自動車のインジェクターは容量は大きいけどレスポンスや霧化特性がイマイチなので、プライマリーはバイク用のインジェクターを使ったほうがいいんじゃないかな? BLAZEでもそんな話してた。

さらに、そのインジェクターに燃料を送り込むための燃料ポンプが大きくなっています。
GSX-R1000の燃料ポンプは、ツインインジェクターに対応できるよう、初期型ハヤブサよりもポンプ容量が大きくなっています。(NAで200ps出すバイクですからね…)
燃料を供給できなければ、いくらインジェクターががんばったって、カラ打ちするだけで、パワーは出ないわ燃調薄くなってブローするわエライコッチャですよ。

◆なぜ燃調が薄くなったのか

これはもう、パワーが出るようになってポンプの容量が追いつかなくなったんですよ。ポンプでかくしましょう。
でかくしようでかくしよう。

って単純に思ってたんです。
ところが、ポンプをいざ交換しようとすると、フューエルラインの取りまわしが変だって若林さん気が付いた。
GSX-Rの燃料ポンプってインタンク式なんですけど、燃料ポンプと燃料レギュレーターがユニットで一体になってるんですよ。そのレギュレータが生きたままフューエルラインに繋がってる。二重にレギュレータが入っていたんです。
レギュレータが二個入ってることの何が悪いのか。二つ入ってたらお得じゃないか、たいへんにけっこうなことじゃないですか。とはいかないのよね。
ターボ用のレギュレータは、過給圧がかかって、インテークマニホールドの気圧が大気圧以上になった時にも動作します。
ターボ用レギュレータの動作

通常、燃料供給にはポンプからがんがん燃料を送っていて、レギュレータは余った分をガソリンタンクに戻しています。
インマニの圧力が上がるとレギュレータの弁を閉じて、戻すガソリンを減らします。そうして燃圧を高めます。高めるっていうよりも常に一定圧(標準43psi≒3kgらしい)で供給できるようにしているんです。
この【燃圧を高める】ってメッチャ重要で、インマニの圧力が1kg上がるってことは、燃圧が1kg下がるのと同じことだそうですよ奥様。

ところが今回、こんなふうに二重でレギュレータがついていた。
NA_turboreguretor
インジェクター手前にあるNA用レギュレータは大気圧以上のインマニ圧に対応していません。NAの場合、大気圧=エンジン停止状態なので、燃料供給を増やす必要がないからです。(ラム圧かけても大気圧にはならない)

しかもこのレギュレータはインタンク式なのでインジェクター供給後に燃料を戻す経路を持っていません。(リターンレス)
インジェクターが必要な分だけ供給しますよ、という仕組みなので余るような燃料は送られないのであります。
後ろのターボ用レギュレータがどんだけ堰き止めようとも、ハナっから燃料が送られていない、つまりはターボ用レギュレータは機能しないのです。
燃料が足らない分はどうするか。ECUをいじって、インジェクタの動作時間を長くします。
インジェクタを目一杯引っ張っても、そもそもの燃圧が足らない。
そらぁ噴かんだろ。燃圧1kg下がるんだもん。通常3kgのとこが2kgになるんだもん。
過給圧が上がれば上がるほど、燃圧が下がるんだもん。
なるほど燃料足らなくなるわけですわ。

このにっくきNA用レギュレータをポーイとうっちゃって、ターボ用レギュレータにきちんと配管したら。
そらあ燃料ちゃんと供給しますわね。インジェクタも目一杯引っ張ってたわけだから、そらあ濃くなりますわー。
そらあイチからマップも書き直しですわーwwww

◆なぜ壊れないのか

MC-Xpressのキットは、シリンダーにゲタを履かせて燃焼室容積を稼いでいます。マアおやすいことw
ゲタを履かせればシリンダ長も伸びるし強度も下がるでしょう。いいことなんかないです。できればピストンもコンロッドも締結するスタッドボルトも強化品にした方がいいんです。
それでも300psくらいなら全然大丈夫、とは言います。アメちゃん、無茶するから特別頑丈に作りましたってスズキの人言ってましたけどもね。
エンジン頑丈だから壊れない、だから大丈夫なのかっつーとそうでもない。燃調薄いと壊れます。

そして何よりも大事なのが点火時期です。
特にターボは、燃料と空気を無理やり詰め込んでるわけです。そのたっぷりのミクスチャに火をつけようってんだから野蛮なんですよ。
プラグから火花が出て、ミクスチャが着火して、火がシリンダに燃え広がってその圧力でピストンを押し下げていくわけですが、回転数が高くなると火が燃え広がるのが間に合わなくなるので、早めに火をつけようとします。ピストンが上がりきるずっと前に火をつけて、上死点で圧力が最大になるようにするわけですね。
ところがターボは無理やりミクスチャを詰め込んでますから、上死点を狙うと圧力が高くなりすぎてノッキングを起こすんですよ。
ピストンの端っこで勝手に急激に燃えて衝撃波を起こしてエンジン壊れます。ピストンリングふっ飛ばしたりね。ピストンの天辺が剥がれたりね。端っこが溶けたりね。

このノッキングの前兆を感知して、自動的に点火時期を遅らせてくれるノックセンサーっていう便利なセンサもあるんですけど、バイクの場合、回転速度やレスポンスが速すぎて、点火時期を遅らせるのが間に合わないんですって。
点火時期を遅らせる調整範囲もそれほど広くはとれないらしく、せっかく便利なのにあんまり実用にはならないっぽい。残念じゃのう。

ターボエンジンのノッキングは過給圧がかかってる真っ最中に起きますから、ノッキングが出るとあっちうまに壊れます。
クルマでターボいじってる人に言わせると、ターボやるなら点火時期は触れなくちゃ【お話にならない】とか…
本当は点火時期も奥が深いんだそうです。燃調なら完全燃焼の割合が14.5:1ってほぼ決まり。パワーが出る領域はもう少し濃くて12くらい。
それが点火時期の話になると、最適解っていうのが「ノッキングする手前」っていうくくりwwww なによそれ。ノッキング係数みたいのはないのか、と。
⇒無いんですね。
そうすっと、ノッキングさせないように点火時期下げてるのに、これじゃ一度はノッキングをさせないと正しい位置がわからないんじゃないですかね。
ノックセンサーでノックの前兆を拾って、負荷や回転数ごとのノックパターンを出して、それをつなぎ合わせて点火時期のマップを作ってるんですかねえ。
もしそうならちょっと今の俺が持ってるお金とコネクションで対応するには難しいですねえ。

俺のはノーマルECUをハッキングして「経験と勘」で点火時期を遅らせているので、今のところノッキングの兆候はありません。
ノッキングはそれほどパワーが出ていなくてもエンジンをピンポイントで壊すので怖いのです。
てか、ノッキングはパワーの有る無しに関係なくエンジンを壊します。
こちらのblogにお越しいただいたzysuさんのハヤブサターボも、壊れた原因はおそらくはノッキングなんだろうと思います。
「高回転でトットットと引っかかる」っていうのがいかにもな感じですので。。

◆まとめ-300ps目指すなら

  • 目指すパワーに見合った容量のインジェクターを使う。ネットに容量計算できるサイトあり。足りない分はとにかく増やす。
  • レギュレーター超重要。ターボ用レギュレータじゃないと十分な燃料が供給できない。
  • その次に燃料ポンプね。
  • 点火時期を遅らせる手段を確保しろ。ECUハックでも、フルコンでも。サブコンじゃ遅角できないので心配。

こんなもんですかねえ。
こうやってあらためて拾い出すと「なーんだ、大したこと言ってないな。常識の範疇だな」って思えてきます。
ターボをいじってるクルマ屋さんからしたら驚くような話じゃないでしょうね、きっと。
まー、ほんでも、バイク屋でターボのことわかってる店もECUがわかる店も少ないからね。
最近ECUをいじりだした店もチラホラ出始めてるけど、ブログとかチラ見してると適当なこと言ってるからね。
俺が若林さん見つけられたのは幸運だったよね。クルマの過給機いじっててバイクのECUもさわれる人なんてそうは見つからないから。

長い長い長い年月がかかりましたけども、ターボバイクを作る勘所がだんだんわかってきたような気がします。
つまりはですねえ。
これだけの準備ができていないターボキット、理解をしていないターボの取りつけのお店っていうのは、大して馬力は出せないし壊れやすいだろうなと思います。

って、言いながら、できあがった途端に俺のが壊れたら赤っ恥なので「だからあの店はダメだ、あのキットはダメだ」なんて絶対にいいませんよおおおお。
クラスフォーのHahnのポンづけはヤメトケくらいは言うかもしれませんが。
ここらへんに気をつけてターボバイクライフを楽しんでくださいねええ。

けえかほうこく

ストラウスはかせわぼくがかんがえたことやおもいだしたことやこれからぼくのまわりでおこたことわせんぶかいておきなさいといった
なぜだかわからないけれどもそれわ大せつなことでそれでぼくがつかえるかどうかわかるのだそうです

サビサビで朽ち果てようとしていたアクチュエーターをTD04のノーマル部品に換え、ふにょんふにょんのバネで低回転から過給圧が少しづつ抜けるようにしたところ、トルクカーブは穏やかに立ち上がるようになり、スムーズにパワーが出るようになってドッカンターボの兆候は消えた。
急激に立ち上がったパワーのせいでスリップしてしまったシャーシダイナモのドラムもちゃんとグリップするようになり、副次的な効果としてより正確なパワーの計測もできるようになった。
まだ回しきっていないので最大出力は未計測だが、おそらく300psは軽々と超えるだろう。
もちろん急激なトルク変動がない分、乗りやすくもなるだろうし、エンジン本体への負担も減ることになる。
後は8000回転以上で薄い兆候があった燃料の供給を補うために、大容量燃料ポンプに交換してノッキングやデトネーションが起きないようにするだけだ。

全てのことが順調に行っていて何もかもが成功への道筋を明々と照らしている。

…って本気にした?ほんきにしちゃった?????

燃料ポンプまではよかったのよ。
サード製で500psくらいまでは燃料送れるやつでね。
コレつけてやれば高回転域で燃料を送りきれずに燃料圧が下がっちゃうこともなくなるはずだった。
ポンととっかえて、燃圧が上がり過ぎたらレギュレータで落としてもとの圧力に戻してやればいいわけで、そしたらECU側の設定はほとんどいじらなくても良いはずだった。

それがさ。
燃料ポンプよ。燃ポン。
今ついてるのはGSX-R1000の燃料ポンプなんだけど、コレはハヤブサの燃料ポンプよりも容量デカいのよ。パワーが大きいっていうのもあるけど、GSX-Rはツインインジェクターになってるってのもあるんだろうね。
キットに入ってたビールのロング缶くらいあるバカでかい、どこのものとも知れない燃料ポンプは浜名湖の女神様への捧げものとなってしまって「タンクにもスッポリ入るしマウント合うし容量でかいしコレにすんべえ」って。

さあ燃ポンとっかえよう。
おお!都合がいいことにGSX-Rの燃ポンと大きさそんなに変わらない!これチョイ加工だけでついちゃうじゃん、簡単じゃんかんたんじゃんw

って付けてみたらなんかフューエルラインの取り回しがおかしい。
どうすっぺこれなんだべ?ってよくよく見たらGSX-Rの燃料レギュレータがそのまんまついてる。
つまり、インタンクの燃料レギュレータと外付けの燃料レギュレータが二重で制御かかってたと。
レギュレータと燃ポンがユニットになってたから、そのまんまつけちゃったんだなー

結局GSX-Rの方のレギュレータを迂回させて、外付けのレギュレータに接続しなおした。
このレギュレータはキットに付属のもので、やっぱりどこのものとも知れぬ怪しい製品ではあるんだが、一応ターボ用らしい。
燃料ポンプもレギュレータもターボ用のをつけないといけないんだよね。
容量を大きくしなくちゃいけないっていうのもあるけど、レギュレータはインテークマニホールドの圧力が正圧になった時でも十分な量を供給しなきゃいけないからさ。
昔、レギュレータの仕組みってエントリ書いたことあるけど、この当たり読んでみて。
このエントリではインマニが負圧になった時のことしか書いてないけど、正圧になった時は今度は逆の動作しなくちゃいけないのよね。

負圧になる ⇒ 燃料が引っ張られて多く出過ぎる ⇒ 燃圧を下げて供給量を減らす
正圧になる ⇒ 燃料が押さえられて出にくくなる ⇒ 燃圧を上げて供給量を増やす

NA用のレギュレータは正圧になった時の動作が考慮されてないんだよね。だからターボ車専用のものが必要になる。
つまりGSX-Rのレギュレータが入っていたことで、正圧時の燃料の供給量が足らなくなっていたんだよね。。。。

で。どうなったかというと。

全体がぶっぱ濃い目に吹くようになりますたwwww黒煙wwwwwwまたかwwwwww

結局、ECUのマップをイチからやり直しになりましたとさwww

トホホ~ (昭和のシメ)