Little New World

【ちょっと新しい世界】改題
僕のもっているネットワークの世界観ていうのを、どうやらきちんと説明しておいた方がいいみたい。
僕の中では「こうに決まってるじゃん」っていうものが出来上がっていて、それを前提に話すので、mixiだとかでコメントをやりとりしてると、その落差にお互いが驚くことがあるんで。
前回のエントリで書いたみたいに、近いうちにデータ通信のネットワークは全部ひとつになってしまう。これは数年のうちに。デジタル放送とNGNが始まり、携帯電話と固定電話の垣根が無くなる2010~11年がターニングポイント。
この年に向けていろいろな法整備が進んでいるんで、官僚とかはきっと明確なイメージを持ってるんじゃないかな。僕が持っている世界観がそのイメージ通りなのかはわからないけども。
デジタル放送が始まると、地方局の収益構造はまるで変わってしまう。アンテナ設備とデジタル放送向け機材・技術者のイニシャルコストが圧迫して赤字転落。
赤字の中で地域向けの放送なんて制作できない。
二次売りできるようなコンテンツを作る必要があって、てことは東京向けの作品しか作れないってこと。
ところがそういうコンテンツは東京でちゃんと作ってるわけ。ローカルな制作会社がローカルで作る意味なんかなくなっちゃって、東京資本の下請け化してしまう。地方にあっても東京制作の地域分散化にしか過ぎなくなるわけだ。
別に視聴者はそういうのは気にしない。キー局配信の番組があれば満足、っていうアンケート結果が出てるんだって。(伝聞につきソース不明)
下請け化すれば制作会社のスキルも専門性も失われる。
ローカル局のローカル番組は資本的にも技術的にもニーズ的にも作れなくなる。
僕はローカルニュースも維持できるか心配してる。
すると困るのがローカルスポンサーなわけよ。
たとえば天気予報にヤンマーやクボタが提供するのは、天気予報ってのはまさしく地域性の高いコンテンツだからなのよ。
「クボタ電動茶摘バリカン」なんて、東京で宣伝してもしょうがないでしょ。静岡とか鹿児島でやるもんです。地域のレストランとか銘菓とか、ローカルだから宣伝する意味がある。
ローカルコンテンツにローカルスポンサーがつくから相乗効果があるのに、それが失われる。
しかも、デジタル放送になるとチャンネルが増えるって言われてるよね。何十というチャンネルが視聴可能になる。浜松の実家でケーブルTVを契約してるけど、30チャンネルくらいあんのかな。子供向け専門番組からお色気番組、ギャンブル番組、音楽番組…何千とある<全国向けの均質化した番組>のどれにローカルスポンサーは提供したいと思う?
放送されるコンテンツ数が多くなればなるほど、一つの番組が占める視聴率は落ちるんだよ。
……

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ネットワークエンジニアリング終了のお知らせ

グループ会社に異動しようとジタバタしているこの何ヶ月間で、なんだかえらい勢いで世の中の情勢が変わってきてるみたいな気がしますよ。
NTTがNGNとか最初に言ってた時は「また回線太くしますって話の何がおもしろいんだ」程度にしか思っていなかったんですけども、どうやら通信インフラ全体が変わってきちゃう様子です。
ITmedia エンタープライズ:“いいとこどり”の次世代ネットワークNGNとは?
NGN : ITpro
なんか、こういうのを眺めててもちっともピンと来なかったのですけど、自分の会社がえらい勢いで店じまいを始めているのを見てると、いよいよひとごとじゃなくなって来ましたわ。
NGN構想って、要は
・データと名の付くものは全部NTTの光ファイバー上で通信させましょう。
・回線上のプロトコルは音声だろうがデータだろうが全部TCP/IPにします。
・通信制御は全部NTTで面倒見ます。
ってことですよ。
今まではセキュリティだとか経路情報だとか、ルータでいろいろ組み合わせて設計し、構築して各地を通信させてたわけですよ。
東京の本社と大阪と名古屋と結ぶ、大阪にデータセンタがあるのでデータベースは大阪に見に行くがインターネットに出るには東京にプロキシをおいてそこから通信させる。大阪-名古屋間は直接通信させずに東京を経由する。
みたいな。
そうすると僕らはルータを各拠点におき、本社にプロキシとL3SWとFWを置き、データセンタにもL3SWを置き、それぞれセグメントを切って本社-大阪間の専用線は太くして、バックアップ回線はISDNで。みたいなことをしてたわけ。回線を選ぶにもNTTだと東西の障壁があるから安い地域網は選べない、とかそんなことも考えないといけなかった。将来的な拡張性も考えて機材や回線を選んでおかないと、その時になって全部やり直しってことにもなりかねない。
それが一挙に簡単になっちゃう。あらかじめどんな構成にするかをNTTに申込み、工事の日はNTTのケーブルの先の終端装置にLAN配線を接続すればOK。値段は安いしセキュリティは確保できるし地域障壁なんてない。
僕らネットワーク屋の出番なんて極薄ですよ。ルータもL3スイッチもセキュリティサービスも網が持ってるんで、ソリューションのしようが無いわけで。
情報処理技術試験「ネットワーク」なんてのもいずれ無駄な資格になりますよ。鉛工技術者みたいなもんでね。
それだけじゃない。
これ、携帯電話も固定電話も取り込んでしまいます。同じネットワークの上で使う端末がPCでもPDAでもソフトフォンでも携帯電話でも使える。東京で使ってた環境を出張先の名古屋で使えるわけ。うっかりするとID/PWで宿泊先のホテルでも使える。転勤しても連絡先は変わらない。
そりゃもうパーソナルな環境がユビキタスに使えるわけよ。
なんか、すまんな。堅い話で。
でも俺にとっては大変な話なわけ。
今まで、俺の会社は「回線を売ってルータをブラ下げる」のを商売にしてた。それに付加価値をつけてた。セキュリティだのセグメントだの接続性だの。でも、その回線もルータももう売れないの。
売るのはその先。お客さんがどんな業務をしたいかってことなの。
つまり今のままじゃ俺の会社は商売にならなくなっちまうの。
だからえらい勢いで店じまいをし始めてるわけ。
俺はもともと回線なんか眼中に無くて、お客さんが何をしたいのかを掘り起こして商売にしてた。だから逆にお客さんがしっかりしてないと商売にならなかった。お客さん自身が問題意識を持っていて、どんな仕事をしたいのか、どんな理想を持っているのかを明文化しないと、どんなシステムが必要でいくらかかるのかを提案できないからね。
コストがかかっても見返りがちゃんとある、っていう提案をするからお互いの商売が成り立つわけでね。
まあ、だから個人的には今まで通りの考え方で行けばいいんだろうが。
でも会社のほうはそうはいかない。回線を売ってた人ばっかりだったんだから。お客さんが「レスポンスが遅い」って言ったら何も考えずに回線の速度を上げるのを商売にしてたんだから。
会社としては、提案能力のある営業マンを育てることよりも事業を縮小することを選んだわけ。人材育成ってコストも時間もかかるからね。モチベーションの問題とか資質の問題とかあるし、優秀な人は外部に流出してしまうこともある。
まあ、リスクを取りたくないんだろう。
で、結果として俺のいる場所は無くなる。
そりゃま、割り当てられた仕事を淡々とこなしていけばいいんだろうけどね。
そういうのもつまらん話だし。
俺のいる会社は、グループも多いし回線も扱ってるから簡単には倒産したりはしないだろうが、その分だけ居心地が悪くなる。
会社がつぶれなくても働いてるこっちの方がつぶれちまう。
だから、今のうちに違う会社でさらにスキルを磨いたほうがいいだろうと思うんだよね。
なんで、もし俺と同じような立場の人がいたら、そろそろ先行きを考えといた方が良いと思うよ。ネットワークで商売するのなんかもうオシマイなんだからさ。
もっとレイヤの高いアプリケーション層とかの仕事がこれからの主業務だよ。
NGNはTVも吸収してしまうからね。
いずれ地上波デジタル放送なんてことになるとテレビ局の収益構造が様変わりしてしまって地方局で番組作成なんてやる余力なんてなくなっちまうの。
「水曜どうでしょう」とか「探偵ナイトスクープ」とかも作れなくなっちまうのよ。
いや、今人気のあるコンテンツは生き残るだろうけど、これからは無理。
映像コンテンツも音楽コンテンツもネットが大きな位置を占めるようになる。
特にお金のかけられないコンテンツはネットに流れる。深夜帯の番組から始まっていずれはゴールデンタイム以外のコンテンツはネットに行くんじゃないの。
今、PCなんて新品でも3万円で買えるんだよ。携帯電話なんか1円だ。すでに小説やポップスが携帯の世界に力を移しつつある。
CDの売り上げだけで歌手が食ってるわけじゃなくて携帯のダウンロードやレンタルショップ、カラオケからの売り上げが部分をしめているように、コンテンツ産業の産業構造自体が変わってしまうんだよ。
今、ニコニコ動画やYoutubeがめちゃくちゃ面白いもんね。
正直、俺はTVなんていらない。
一日中ニコニコかyoutube見て2ちゃんしてりゃそれでいいじゃん、って人もいるだろ。
いや、その方がTVなんかよりも面白いと思うよ、実際。
今からやるなら、コンテンツをネットに持ってくる仕事っていうのが、見込みがありそうなんだよなあ。
過渡期だから、需要がすごくすごくありそうなんだよね。
だれかやとってくれないかなあ。